▼VIÊT-NAM Musiques et chants des Hmong

ルーマニア人の民俗音楽学者Constantin Brailouがスイスに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関であるAIMPが所有するベトナム少数民族=モン族のフィールド録音。その音楽は、独奏を中心とする非常にシンプルな演奏なのだが、仏教に影響を受けつつも独自の祖先崇拝/精霊信仰が生み出したもので、ジャケットにあるような草笛を始めとする奇妙な楽器を使った器楽や呪文のような声楽の音色は、他の民族音楽でも滅多に味わえない霊的なヤバさがある。

そして、モン族は今もベトナム以外の国にも多く住んでいるのだが、実は、ここにモン族の歴史が隠されている。
世界民族博覧会<モン族>
中国 :738万3千622人 (1990年:中国少数民族事典)
ベトナム:約55万8千053人(1989年:推定)
ラオス :約31万5千465人(1995年:推定)
フランス:約 1万2千人 (1987年:推定)
ビルマ :約 1万人 (1987年:推定)
カナダ :約 1千人弱 (推定)
アメリカ: 20万人以上 (推定)
なぜ北米アメリカに20万人も住んでいるのか?
そこには、ベトナム戦争とアメリカ合衆国CIAの秘密工作に翻弄されたラオス山岳に住むモン族の悲劇があった。
(以下、引用)「ベトナム戦争中、当時の北ベトナムが、南ベトナムで戦う解放民族戦線に物資を輸送したルートが所謂ホー・チ・ミン・ルートである。米国はラオス国内を走るそのホー・チ・ミン・ルートをたたくため、山岳地帯を機敏に動くラオスに住むモン族の機動力に目をつけ、高い報酬でモン族を雇った。1961年、ラオス北部に米軍基地がつくられ密かにモン特殊部隊が組織された。そしてモン特殊部隊はアメリカ軍の先兵として北ベトナム軍やラオス愛国戦線(パテト・ラオ)と戦うことになった。


アメリカ合衆国の反共産主義戦争に利用された挙句に置き去りにされ、祖国ラオスからは裏切り者と迫害され、捨てられた恨みを持つ国に亡命して行ったモン族の人々の哀しみは計り知れるものではない。移住した合衆国でも悲しい差別が続いている(「米中北部のウィスコンシン州の森の中で、鹿狩りに来ていたラオスの山岳少数民族モン族の出身の男性が、口論の末、白人ハンターの男女6人を殺害」日刊ベリタ)。

▼「30年目の戦後処理:アメリカと共に戦った民族」/THE MOST SECRET PLACE ON EARTH - CIA'S COVERT WAR IN LAOS
このドキュメンタリーでは、ベトナム戦争でモン族を置き去りにした実働部隊の少佐のトラウマをモン族の祈祷師が取り除くことになるのだが、4時間以上も続いたという祈祷師の祈りの歌が素晴らしい。そこから安直な癒しを得る少佐の言葉には怒りすら覚えるが、あまりにも哀しく優しい赦しの歌声には心が洗われるようだ。
モン族のその神秘的な歌声に民族の悲劇性を感じてしまうのは悪しき感情移入だと思う。でも、正史といわれる欧米中心の歴史の裏側にある民族の声に耳を傾け、辺境といわれる音楽の偽史をこれからも聴き続けたいと心底思った。
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▼米国のモン族の若者が直面する暗い歴史
▼hmong veterans of the cia's secret warラオス山中には、今も当局から逃亡を続けているモン族がいる...。
▼北米に住むモン族のラップ。新しいカルチャーも生まれてる。
TSIS MLOOG ZOO by JiNN Thao
▼町山智浩による『グラン・トリノ』ポイント解説(『映画秘宝』2009年6月)完璧な論旨。必読。
▼MA GUO GUO plays the Chinese Jew's Harp Kou Xian
Jew's Harpとは口琴(こうきん)と呼ばれる楽器で、モン族のフィールド・レコーディングでも使われてたんだけど、この中国人の演奏もかなり狂ってる。
ツイッターで白石隆之さんがツイートされてたアイヌの民族楽器ムックリの演奏に最近衝撃を受けたんだけど、両者の音が実はかなり繋がってる。
アイヌの歴史は日本との関係性において語られることが多いけど、実際は、モンゴル帝国~清朝は、アムール川下流域で朝貢交易を行い、アイヌなどサハリンの先住民とも接触を持っていたらしい。なるほど。
▼All sound recordings below were made in Saigon before 4/30/1975 Ciao! Bella
ベトナム戦争中の南ベトナムの70年代カルチャーを伝えるポップス・ポッドキャスト。すべてサイゴン(現ホーチミン)で録音されたものらしく、500曲以上の膨大な記録(すべてダウンロード可能)。中国の影響だけでなく、ベトナム戦争期にもたらされたアメリカン・ポップカルチャーの影響が入り混じってる。
▼フランソワ・ジューファのベトナム・フィールド録音も聴いてみたいな~。
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